WEB UNIVERSITY 人口減少が不動産や賃貸需要にどのような影響を与えるのか? 2020.03.10
不動産投資を始めようとしている私たちが「人口減少が叫ばれている今、賃貸住宅に住む人も減ってしまうんじゃないの?」と、その影響を不安視してしまうのは当然のことです。
不動産投資は、住む人がいてはじめて事業として成り立つわけですから。今回は、人口減少と不動産や賃貸需要の関係について学びます。上っ面の話ではなく、裏付けとなるデータを沢山盛り込んで解説します。
この講義を聞いて、冒頭の不安が少しでも解消されるのでしょうか?それでは、始めましょう。
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-2053年には1億人を割る?止まらない日本の人口減少
-人口減少が住宅不動産需要にもたらす影響の大きさとは?
-住宅不動産需要にダイレクトに影響を与えるのは人口でなく世帯数
-住宅不動産需要と賃貸需要は別!賃貸需要を占う様々なデータ
-賃貸需要に好影響!日本人の不動産に対する志向の変化
-人口減少時代に地方都市で賃貸需要が望める場所とは?
-人口減少時代も賃貸住宅需要を下支えする単独世帯の増加と脱持ち家志向
2053年には1億人を割る?止まらない日本の人口減少
総務省の発表データでは、2005年ごろをピークに日本の人口はわずかずつ減り始めているそうです。国勢調査の最新である2018年のデータを見てみると、近年減少というよりも、伸びが止まりほぼ横ばい状態であることが分かります。
しかし、国の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所の将来予測(※出生・死亡中位予測)によると、2040年の1億1,092万人を経て、2053年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になるものと推計されています。
[グラフ1]
[グラフ1]を見ると分かるように、4大都市においても、2045年までに東京だけが人口減少を免れると予測されている状況です。地方都市においては、さらに人口減少が進むと見られています。
それでは、人口減少は不動産にどのような影響を与えるのでしょうか?
人口減少が住宅不動産需要にもたらす影響の大きさとは?
人口減少の予測から、住宅不動産、さらに賃貸住宅の需要は今後減るのではないか、とその影響を懸念する人も多いようです。人口が減っていくのだから、住宅不動産はその分必要じゃないのではないかというロジックです。
[グラフ2]
[グラフ2]は、都道府県別の2045年の将来予測人口と2015年の人口を比較し、減少幅が少ない順に並び変えたものです。全国平均で16%、最も人口減少の度合いが高いところでは4割も減ると予測されています。
大幅に人口減少が進むと予測されている地方都市などのエリアでの賃貸住宅経営はこれから厳しくなるのではないか、という声も聞かれます。もちろん、住宅そのものの需要(必要総数)は減っていくことは間違いないでしょう。しかしながらそれが、「イコール住宅不動産需要の減少」ではないのです。
「人口減少がダイレクトに賃貸需要に影響するということではない」、不動産投資においてはここが非常に重要なポイントです。
いったいどういうことでしょうか?
住宅不動産需要にダイレクトに影響を与えるのは人口でなく世帯数
人口動態と住宅不動産需要を考える上で重要な概念があります。それは、住宅不動産需要のことを論じる際には、人口そのものよりも世帯数を意識した方が、現実的であり、より正確な判断をすることができるということです。それは、二世帯住宅などを除いて、一般的には一世帯に対し一つの住居が必要だからです。
[グラフ3]
[グラフ3]は、日本全体の将来世帯数予測で、平成30年推計の最新データです。これを見ると分かるように、日本では人口減少は起こるものの世帯数は向こう20数年大きく減ることはないようです。
さらに、都道府県別に見ていきましょう。
[グラフ4]
[グラフ4]は、2015年の世帯数を100とした時に2040年の予測値をあらわしたもので都道府県別に比べたものです。世帯数動態は人口と違い、暫くは大きく減少することはないと予測されています。地方主要都市においても、世帯数の下落幅はそこまで大きくなく、住宅不動産需要に大打撃を与えるという程の影響はなさそうです。
住宅不動産需要と賃貸需要は別!賃貸需要を占う様々なデータ
前述のとおりこれから日本は、地方都市を中心に大きく人口減少が起こります。一方、世帯数は[グラフ4]で見たように、2040年に向けて2015年対比で沖縄県・東京都・愛知県・滋賀県・埼玉県など増える都道府県もあるようです。減少すると言っても、一部のエリアを除いて、概ね対比マイナス10%以内といった状況です。とはいえ、明らかに世帯数も減少するわけなので、「住宅不動産需要の減少」は避けられないように思えます。しかし、不動産投資で重視するのは「賃貸住宅需要」であって、「住宅不動産需要」とは別に考えるべきではないでしょうか。
なぜならば、そこに住んでいる世帯類型が賃貸住宅の場合、かなり特徴的だからです。直感的に考えてみてください。
賃貸住宅には、ファミリー世帯か単独世帯かどちらが多く住んでいると思いますか?
逆に、住宅を購入し持ち家として住んでいそうなのは、ファミリー世帯ですか?単独世帯ですか?
賃貸住宅は単独で、持ち家はファミリー世帯というイメージは何となく湧きますよね?直感的に考えたその答えは、実はデータからも分かっています。[グラフ5]は、5年に一度行われる総務省統計局の「住宅・土地統計調査」の平成30年データより作成した、世帯類型別(親族世帯・単独世帯)に賃貸か持ち家のどちらに住んでいるかの割合を見たものです。
[グラフ5]
日本では、単独世帯の62.1%が賃貸住宅に住んでいることが分かります。東京都は単独世帯の7割が賃貸住宅です。市町村別に見ると、地方都市の中でも県庁所在地など中心的なエリアでは6割以上という数字も出ています。つまり、賃貸住宅の需要の多くを支えるのは、単独世帯もしくは、2人暮らし世帯なのです。
それでは、話を人口動態に戻します。賃貸需要にとって重要な単独世帯は、今後どうなっていくのでしょうか。[グラフ6]は、国立社会保障・人口問題研究所による、単独世帯の数を予測したデータです。
[グラフ6]
単独世帯はこの先、しばらくは大きく増加を続けると予測されています。そして、単独世帯数は日本のほとんどの県で大きく増加します。例えば人口が30%以上、世帯数が15%以上減少する北東北の各県などにおいても増加する様子が見られます(正確には、いったん増えて、その後ゆるやかに減る)。その理由は様々考えられますが、少子高齢化の流れは、単独世帯を確実に増やします。高齢の夫婦の世帯で夫婦のどちらかが亡くなり、配偶者が単独者世帯になるというケースは高齢化社会が進めばますます増加すると考えられます。一方、晩婚化や離婚件数の増加も世帯数の増加に大きな影響を与えます。この先、生涯独身の人が増えると予想されていますが、そうすれば単独世帯もさらに増えるでしょう。これらの根拠をもとに単独世帯は将来的にも増加を続けると考えられ、賃貸需要の大きな下支えとなります。こうしたデータを丹念に見ていくと、人口減少で「住宅不動産需要が減る」ということイコール「賃貸需要が減る」ということではないことが分かります。
これは大都市だけのことではなく、地方都市でも言えることです。
賃貸需要に好影響!日本人の不動産に対する志向の変化
データで見てきたように、人口減少が起こる一方で、世帯数はそれほど減らず、単独世帯等が増える今後の状況を考えれば、この先の賃貸住宅需要は底堅いと言えるでしょう。賃貸住宅需要がこの先もそれほど大きく先細らず、手堅い状況にあるということは、いくつかのデータが示していますが、ここでは、「持ち家比率」という視点から見てみましょう。[グラフ7]は、各年齢層別の持ち家比率を国土交通省の昭和63年調査と平成30年調査で比較したものです。
[グラフ7]
住宅一次取得のメイン層である30代・40代の持ち家比率がここ30年で大きく低下しているのが分かります。持ち家志向が低下している背景には、所得低迷、機能面・質においての賃貸住宅品質の向上、景気の不透明さなどが考えられます。また、縛られないライフスタイルを望むという若い世代の考え方そのものも大きく影響してます。「30代、40代になったら持ち家」という日本人の多くが抱いていた不動産に対する志向が徐々に崩れてきています。この変化が賃貸需要の拡大にも大きな影響を及ぼしているのです。
人口減少時代に地方都市で賃貸需要が望める場所とは?
日本の人口は2005~2006年ごろをピークに増加が止まり、現在は横ばいか微減状態となっています。一方で、単独世帯数の増加、持ち家志向の低下など、住宅不動産、賃貸住宅需要の底堅さを物語るようなデータもあります。
全体の人口が横ばい、もしくは微減を続ける中、国内の県と県との間、都市と都市(地方市町村も含む)の間において、人口の移動が進んでいます。地方から都市部へは相変わらず、人口移動が続いている状況です。人口流入が多い三大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏)における人口はますます増加していくでしょう。
逆に、北東北、山陰、四国、南九州などは人口流出が多く、人口減少は更に加速すると予測されています。そのようなエリアでは、賃貸住宅需要への影響を危惧せざるを得ないかもしれません。しかし、こうした人口移動は、県と県の間だけではなく、エリア内でも県内でも人口の移動が起こっているようです。例えば、北海道では全体の人口は減りながら(県外流出過多)、その一方で道内最大都市の札幌市の人口は増えています。道内から札幌への流入が多いのです。この日本全体の傾向は、県単位での小さなエリアでも同様のことが起きています。人口減少が続く県であっても、県内主要都市には、県郊外エリアからの移動が起こるでしょう。さらに、多くの都道府県・市町村が力を入れている政策である「コンパクトシティ構想」もこの中心都市への移動に拍車をかけています。コンパクトシティとは、政府が地方都市などで推進する政策で、「都市の中心部に行政、商業、住宅など様々な都市機能を集中させる」ことですが、現在の地方都市の中には、まだまだ効果的な都市機能を持った街づくりができているところは多くないのが現状です。コンパクトシティ化によって、都市自体の機能が大きく変わり、住民にとって本当に住みやすく暮らしやすい都市が実現すれば、また、新たな人口移動が起きるでしょう。
このように人口の移動に拍車がかかると、一時的な住宅としての賃貸住宅需要は伸びると予測できます。つまり、このような状況があてはまる都市においては、たとえ人口が減少しているとしても、その都道府県内の中心的な都市では賃貸住宅需要は維持すると考えてもいいでしょう。
人口減少時代も賃貸住宅需要を下支えする単独世帯の増加と脱持ち家志向
今回は、「人口減少時代でも賃貸住宅需要は底堅い」ということに対して、「単独世帯が増加しているから」「持ち家志向が変わって来ているから」という2つの大きな理由をあげました。また、それぞれにその根拠を示すデータも沢山出てきて、より安心感を得られましたね。客観的なデータを自信に変えて、不動産投資への一歩を踏み出して行きましょう。
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不動産投資の大学
Writer:HRI journal 編集部
Tag:#不動産投資の大学