DATA 低迷が続く貸家着工戸数 個人向けアパートローンの貸出がどれ程減っているのか 2020.02.07
2019年住宅着工戸数は3年連続で減少
国土交通省が1月31日に発表した2019年の新設住宅着工戸数は前年比4.0%減の90万5,123戸となり、3年連続のマイナスとなりました。
■住宅着工戸数の年計推移
(出典)国土交通省
利用関係別にみていきましょう。
(出典)国土交通省
注文住宅などの「持ち家」は1.9%増の28万8,738戸、分譲住宅も26万7,696戸で前年比+4.9%となる中で、貸家が前年比ー13.7%の34万2,289戸と大きく低迷をしています。
貸家着工戸数低迷の背景のひとつとして、金融機関が投資用不動産向けの融資審査を厳格化したことがあげられます。
減少を続ける個人向けのアパートローンの新規貸し出し状況
■個人による貸家業の設備資金に対する新規貸出(国内銀行)
左軸:新規貸出額(億円)、右軸:前年同期比
(出典)日本銀行、国土交通省
2015年の相続税の基礎控除引き下げを見据え節税対策を考える地方の地主や昨今の不動産投資ブームの影響で副収入を狙うサラリーマンが増えたことなど、銀行にとって個人の貸家業に対する貸し付けは大きな成長マーケットとして捉えられ、積極的に融資が行われてきました。ところが2018年初頭の「かぼちゃの馬車融資問題」をきっかけに風向きが変わり、新規の貸し付けについては消極的な姿勢を示す金融機関が増えてきており、新規融資額はここ数年前年同期比10%以上のマイナスが続いています。
■個人による貸家業の設備資金に対する新規貸出(国内銀行)と貸家着工戸数の推移
(出典)日本銀行、国土交通省
2016年度をピークに着工戸数・アパートローン新規貸出額ともに減少しているのが一目瞭然で、両者の相関係数も0.86と高い数値となりました。しかし、「かぼちゃの馬車融資問題」を発端とした、金融機関の融資厳格化は前述の通り2018年頃からです。それ以前に、着工戸数が減少しはじめたのは、地方を中心として相続税対策として高まっていたアパート需要が落ち着いてきたことが影響しているとみられます。貸家着工戸数が伸び悩めば金融機関の融資額も減り、金融機関が融資を厳格化すれば貸家着工戸数が減るといったように、どちらが先行するわけでもない両者の関係性がデータからもうかがえました。