BUSINESS TREND コロナショックで地価はどのくらい影響があったのか? 令和2年基準地価を深堀 2020.10.05
9月30日に国土交通省より都道府県地価調査が公表されました。新型コロナウイルスの影響で全国の商業地の平均は、5年ぶりに下落に転じましたが、一方で、通勤やテレワークに便利な戸建て住宅の需要で、一部の住宅地では上昇したエリアも見られました。
今回は、コロナショック直後で注目を集めた基準地価について深堀していきます。
基準地価とは何か。公示地価との違いは?
今回公表された基準地価は、「都道府県地価調査」で公報された価格のことを言います。この、都道府県地価調査は、毎年7月1日を基準日として各基準地につき1名以上の不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、各都道府県知事が毎年9月下旬に公報するものです。そして、都道府県の発表に合わせて、国土交通省が全国の状況をとりまとめて公表しています。ところで、この基準地価ですが、毎年、20日前後に公表されていましたが、これも新型コロナウイルスの影響なのでしょうか、今年の公表は、9月30日と例年稀に見る遅さでした。
一方で、公示地価はというと、地価公示法に基づいて、国土交通省土地鑑定委員会が、適正な地価の形成に寄与するために、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示するものです。
基準地価と公示地価は「調査時期、調査地点において相互に補完的な関係」にあると言われています。
価格差はどれくらいあるのか?
下のグラフは、都道府県別の平均基準地価と平均公示地価の差を見たものです。
■都道府県別 【基準地価―公示地価(R2年)】の値比較
多くの都道府県で基準地価の方が、価格が低くなっており、平均の騰落率は26.1%と大きく開きがあるのが分かります。ただ、令和2年の基準地価は、コロナショックを受けたため大きく下落したと推測することも出来ます。しかし、昨年の都道府県別の騰落率を平均すると、結果は、25.1%と同じような結果となり、基準地と公示地価の差はどうしても発生してしまうようです。
では、同じ都道府県の土地の平均結果であるのに、どうしてここまで価格差が出てしまうのでしょうか?
評価する土地の内容が全く異なる
基準地価と公示地価の価格差の要因は、評価する土地の内容が異なるからです。
以下は、国土交通省が公示地価、基準地価を公表する際、同時に発表している「都道府県別・用途別標準地数(用途別基準地数)」の内訳を比較したものです。
■用途別 公示地価標準地の割合
■用途別 基準地価基準地の割合
これによると、公示地価の標準地の8割が市街化区域を対象としているのに対し、基準地価は市街化区域が半分にとどまり、都市計画区域外も多く含まれているのが分かります。
市街化区域を中心に算定されている公示地価の方が、基準地価より高くなるのは、当然と言えます。
公示地価の標準地と重複している基準地もある
もちろん、公示地価の標準地と都道府県地価調査の基準地で重複している地点もあります。例えば、「令和2年東京都基準地価格」における「住宅地」では121地点、「商業地」では90地点が重複していました。ちなみに、全国で見ると、調査地点数は公示地価が約26000、基準地価は約21000地点となっており、うち約1600地点が同一地点です。同一地点が10%以下のため、県単位や市町村単位での、実数字の単純な比較はできませんが、推移をみることで上昇下落といった傾向はつかむことができます。
それでは同じ地点において、地価は変化したのでしょうか?東京23区で重複している71地点で、令和2年1月1日基準の公示地価と令和2年7月1日基準の基準地価の変動率を算出すると、「0」つまり変動なしが29地点、下落した地点が42地点で、上昇した地点はありませんでした。ちなみに、令和元年基準地価(住宅地)から令和2年公示地価で同じように、変化地点数を算出すると、共通していた69地点のうち、上昇が65地点、変化なしが4地点で前回は明らかに上昇しているエリアの方が多かったようです。
東京23区の住宅地に関してだけ言えば、コロナショックを挟んだ半年間で、地価は明らかに下落しているようです。