BUSINESS TREND 〈空き家率〉に隠れた本当の意味とは? 2019.08.22
~話題沸騰!空き家問題とは~
昨今、居住者が不在のまま放置されている「空き家」に関する問題がニュースなどで取り上げられているのをよく目にします。空き家によって生じる問題には、以下のようなものが挙げられます。
・景観の悪化
・所有者の不明瞭化
・土地活用の鈍化
・地価の下落
本記事では、このような問題を抱える空き家に関するデータと、「空き家」の本来の定義について考察していきます。
~平成30年住宅・土地統計調査発表!空き家率の推移は如何に~
今年4月に、住宅・土地統計調査の最新結果が発表されました。「住宅・土地統計調査」とは、我が国の住宅とそこに居住する世帯の居住状況、世帯の保有する土地等の実態を把握し、 その現状と推移を明らかにするために、5年ごとに行われる調査です。(総務省統計局ホームページより)
住宅・土地統計調査では全国の空き家数・空き家率のデータを公表しています。今回は、そのデータについて見ていきたいと思います。
まず、全国の空き家数・空き家率の推移を見てみましょう。前回の住宅・土地統計調査が発表された際、空き家率が今後上昇を続けるだろうと予測されていました。たしかに、過去30年間空き家率は上昇を続けており、今回も空き家率は過去最高値を更新したのですが、今回の調査結果では空き家率の上昇は緩和されており、都市部の再開発や住宅需要の拡大によって空き家問題が改善されつつあると予測できます。とは言うものの、依然として空き家率は13.6%と高い数値を示しています。
さて、一度この数値について考えてみましょう。13.6%を具体的に想像してみるとおよそ7戸に1戸が空き家であるということになります。皆さん、身の回りの住居を見渡してみてこんなに多くの空き家が存在しているでしょうか。あまりそのようなイメージはないかと思います。では、なぜこんなにも空き家率は高くなっているのでしょうか。
~本当の空き家は「その他の住宅」~
そもそも、空き家とはどのような住宅のことを指すのでしょうか。一般的に空き家と言うと、ニュースで空き家問題として話題になっているような、長年の放置や手入れ不足によって見た目が老朽化している物件を想像される方が多いかと思います。
空き家の定義について、住宅・土地統計調査では図表2のように分類されています。この分類を見ると、空き家の中には賃貸・売却用の住宅など、今後人が住む可能性の比較的高い住宅が含まれており、住居者が見つからない可能性の高い空き家は「その他の住宅」にあたると考えられます。このような「その他の住宅」は長期的に入居者が不在になる傾向があり、近年の空き家問題を生み出している主な原因であると考えられます。つまり、この「その他の住宅」が空き家問題で取り上げられているような事実上の空き家であると言えます。
図表2 住宅の定義
~真の空き家率は5.6%!~
そこで、先程のグラフで示した通常の空き家を「広義の空き家」、その他の住宅を「狭義の空き家」と定義した上で、全国の空き家率を見ていきたいと思います。
図表3を見ると、狭義の空き家率は5.6%と広義の空き家率に比べて格段に低いものの、着実に上昇を続けています。つまり、狭義の空き家はおよそ18戸に1戸であり増加傾向は収まっていないため、依然として空き家問題は解消に向かっていないだろうと考えられます。
また、図表4を見ると都道府県ごとに広義・狭義の空き家率の変化の程度が異なっています。
たとえば、三大都市の中で広義の空き家率が非常に高かった大阪府は、狭義の空き家率では4.5%となり、愛知県の4.1%と大差ない数値を示しています。これは、再開発事業が進んだことによって一時的に賃貸または売却用の住宅が増加したことで、広義の空き家が増えてしまったためであると考えられます。
他にも、広義の空き家率が20%前後で上位だった山梨県や長野県の狭義の空き家率は8%台まで下がっており、避暑地やキャンプ地として別荘が多く建てられていることが原因であると予想できます。
図表4 平成30年 都道府県別 広義・狭義の空き家率(広義の空き家率の高い順に掲載)
~統計マジックに気をつけて~
今回紹介したような言葉の定義や計算の方法によって算出される数字が大きく見えたり小さく見えたりする現象は一般的に「統計マジック」と呼ばれています。統計データを発表している側に「相手を騙そう」というつもりがなくても、情報の送り手と受け手の解釈との違いによって統計マジックは往々にして発生します。
データの真意に注意しながら正確に空き家率を読み取ることが必要であると考えられます。
Writer:HRI journal 編集部
Tag:#空き家
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