CRE戦略の基礎③ 中小企業の事業・資産承継とCRE戦略

CRE CRE戦略の基礎③ 中小企業の事業・資産承継とCRE戦略 2020.04.08

中小同族企業と不動産

日本における中小企業の大半は親族が会社を経営する同族を中心とした、いわゆる同族企業です。
中小企業の場合、その企業が事業に使っている不動産を経営者が所有しているつまり、「資本と経営が一致」している例が多く見られます。次のデータは2006年と少し古いアンケート結果ですが、中小企業経営者の個人資産における事業用資産の内訳を見たものです。

中小事業経営者のもつ資産のうち、約3分の2が事業用資産であり、更に約3割が事業用不動産であるのが分かります。

また、企業が銀行などから資金調達する際、経営者の所有する(企業とは関係のない)不動産を担保にしたり、経営者が個人保証を付けたりする例が多く見られます。経営者の個人保証を付ければ、その借り入れは経営者個人の借り入れと同じということになります。


このように、規模が小さな企業ほど、社長個人資産を担保提供している割合が高くなっています。
運転資金が必要な場合はしかたがないにせよ、新規事業を立ち上げるような事業融資の場合でも、銀行などの金融機関は、経営者に関与する担保、保証を求めることが一般的です。
このような状況下では、「企業の不動産=経営者の不動産」という図式になります。そのため、中小同族企業のCRE戦略においては、法人所有の不動産と経営者(個人)所有の不動産を区別して考える必要があります。

中小同族企業の事業承継と不動産

中小同族企業の事業承継において、個人の財産とともに現預金、企業として使っている店舗・工場といった事業用資産、また企業として投資購入している不動産などの資産や負債も相続の対象となります。
こうした相続財産は、企業として使っているものと個人として使っているもののいずれの場合でも、現金や株式等で保有するよりも不動産として保有する方が相続税も低くなる可能性が高くなります。
先ほどと同様の中小企業庁のアンケートによると、5,000万円超の相続税負担を予想する企業は全体の約11%であり、予測される相続税をどこから出すかについては、事業用資産の売却または物納を検討している企業が全体の約2割にも上るようです。ここに中小企業の事業承継の難しさがあります。つまり、企業経営の観点からCRE戦略を行い、経営者所有で企業が使用している不動産に関しては、事前に売買するなどして企業所有に転換して、不動産が今後も継続的に利用できる状態にしておくことを考えるべきと言えます。

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